脳は進化する
生まれながらにして人差し指と中指がつながったまま生まれる人がいます。
その人の脳を調べてみると、その人には、5本目に対応する脳の神経部分が存在しません。
4本指なので、脳も4本の指に対応する神経しかないのです。
つまり、人の脳は、あらかじめ指が5本あることで構成されているわけではないということです。
生まれる時に指が4本の場合は、脳の神経も4本の指に対応していて、生まれる時に指が5本の場合は、脳の神経が5本の指に対応するようになっているのです。
不思議ですね。
指の分離手術
では、指が4本で生まれた人が、指の分離手術をして指が5本になったら、脳はどうなるでしょうか?
指が分離されても、脳は4本の指に対応する神経しかないので、分離された指は同じ動きをするはずですが、驚いたことに、5本の指が別々に使えるようになるのです。
そこで、脳を調べたところ、わずか一週間で5本目の指に対応する神経ができていました。
脳は、身体の変化に対してダイナミックに進化しているのです。
たとえば事故で手を失った人は、手に対応する部分の脳がどんどん退化していきます。
逆に、バイオリストは、指に反応する脳の部分がものすごく発達しています。
このように、身体からの情報が脳に大きな影響を与えるのです。
原人の脳
人間の脳が現在のような姿になったのが、数十年前で、ネアンデルタール人、クロマニヨン人などの原人が進化して、人類は発達してきました。
さて、ネアンデルタール人やクロマニヨン人の子供を現代につれてきた場合、どうなるでしょうか。
彼らは非常に原始的な生活をしてきましたが、彼らの子供を現代につれてきて、言葉を話して、学校に通わせ、数学や理科社会を教え込めば、言葉、数学、理科社会ができるようになるはずです。
人間が成長していくには、体の構造と周囲の環境がとても重要になります。日本人だって小さい時から英語圏で育てば、英語を話せるようになるのです。
原人でも脳自体はすでに発達していて、現代人の脳と変わらない容量があるということです。
脳は、環境によって進化するのです。
参考文献:池谷裕二 進化しすぎた脳