神経細胞のネットワーク

コンピューターと脳では、記憶の方法が大きく異なります。
コンピューターは、ハードディスクにアドレスが決められていて、その場所に情報が保管されます。つまり、きまった場所があり、そこからファイルを取り出せば、情報をアウトプットできるということです。
ところが、脳の記憶方法は、情報を格納する場所が決められているわけではなく、神経細胞のネットワーク上で情報の部品をその都度組み合わせて、概念を構成し、ひとつの記憶としてアウトプットします。

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上のスケッチは、脳の神経細胞のモデルです。ちょうどオタマジャクシのような形が一つの神経細胞と思ってください。そのオタマジャクシの頭の部分に核 ● があります。そして、オタマジャクシのしっぽが他のオタマジャクシの頭とつながっています。
このつながりをネットワークと言います。例えばサルを脳が記憶ということは、オタマジャクシのしっぽが赤くなって、そのネットワーク上で、「毛が生えている動物」という情報の部品と「あったかい」という情報の部品、その他「目がある」「鼻がある」などたくさんの情報の部品をネットワーク上でつなげて、サルという概念を脳が認識できるわけです。
ウサギの場合を見てみましょう。ウサギの場合は、ネットワークの大部分がサルとは同じですが、「耳が長い」「目が赤い」等のサルと異なった情報の部品を持つ神経細胞がネットワーク上でつながることによって、ウサギという概念を認識できるのです。一方、桜という記憶の場合は、サルやウサギのような動物とはちがった場所のネットワークが接続されて桜という概念が認識されます。
このように、脳の記憶は、ネットワークのつなぎ方を変えることによって、ネットワーク上で記憶しているのです。

神経細胞のつくり

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神経細胞を詳しく見てみましょう。
神経細胞は、オタマジャクシのように頭としっぽがあります。オタマジャクシの頭に相当する部分が神経細胞では細胞体で、オタマジャクシのしっぽに相当する部分が神経細胞では軸策といいます。細胞体には核があり、樹状突起が伸びています。また軸策の先端は軸策終末部といい、この軸策終末部と樹状突起の部分が結合してネットワークを構成します。

記憶のメカニズム

記憶は、神経細胞のネットワークのつなぎかえ、つまり神経細胞のネットワークの変化そのものとなります。そのネットワークの変化には、3つの方法が考えられます。

その1:あたらしい神経細胞が生まれて、その新しい細胞とつながる

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軸策の先端の軸策終末部と樹状突起が結合する部分を拡大してみると、先端の部分で物質が流れているのが見られます。その結合している部分をシナプスといい、イオンが流れています。ネットワークが結合するとは、そのイオンが流れて情報が伝達されることをいいます。
上のスケッチは、新しい神経細胞Cが生まれて、神経細胞Aの軸策終末部と新しい神経細胞Cの樹状突起がまさに結合されようとしています。

その2:あたらしいシナプスを発芽させる

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神経細胞A、神経細胞B、神経細胞Cのうち、神経細胞AとCが結合されている状態で、細胞Aの軸策からシナプスが発芽して、まさに神経細胞Cと結合しようとしている状態です。
オタマジャクシA、B、Cがいて、AとBはしっぽと頭が触れているのですが、Aのしっぽの先端が枝分かれして、まさにオタマジャクシCの頭に触れようとしているということです。

その3:もともとあったネットワークの伝達率を上げる

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神経細胞Aと神経細胞Bはネットワークでつながっていたのですが、イオンの伝達率が悪く、ネットワークとして機能していませんでした。そのネットワークのイオンの伝達率を向上させることによって、ネットワークとして利用できるようにします。
このことで、機能していなかったネットワークが活用できるようになります。

神経細胞のネットワークの変化

神経細胞のネットワークの変化には、上記のように3種類が考えられますが、新しい神経細胞が生まれたり、あたらしいシナプスを発芽させるには、時間がかかります。
そのため、ひごろ記憶を思い出すという行為は、神経細胞同士のネットワークの伝達率をアップすることによってネットワークのつながりを変化させて、概念を構築して記憶をアウトプットしていると考えられます。

参考文献:記憶力を強くする 池谷裕二

よろこ