日曜日のうんちく
疑うことは悟ること
自分は若年のとき、学問上多くの疑問点があった。中年に至っても同じようであった。
一つの疑問が起こるたびに物の見方が少し変化した。
すなわち、学問がすこし進歩するのを自覚した。
ところが、近年になると、少しも疑う心がなくなり、学問もまた進歩向上するのを自覚しなくなった。
物事を疑うことは、学問が進歩する機会であるというのですが、
これは、「われ思う。ゆえに我あり。」ということばで、考える主体として自己を定義したデカルト的発想です。
なんでもどのようなことに対しても疑問を持つことは、考えを深めることに役立ちます。
常日頃から、なぜこのようになっているのか?本当にこれでいいのか?
など自分で疑問をだして考える訓練をしてみるのです。
実際、疑いをもつポイントをどんどん書き連ねていくことで私たちの脳は活性化していきます。
ごく簡単な方法として、たとえば、はてなマークを付けてメモをとるという癖をつけるのは、なかなかいい方法なのではないかと思います。
手帳に「・・・・?」と疑問をかきましょう。
文章を書くときには、この「はてな」さえできれば、あとはだいたい書けてしまいます。
企画書なども、「はてな」で出発しているものは、人の心にはいりやすい傾向があります。
ですから、どんな問いを立てるのか、あるいは、どんなところに疑いをもつのか。これは「発問力」、あるいは、「立問力」といっても良いと思いますが、いい問いを立てることが、結局、どれだけ考えを深めることができるかを決めることになると言っても過言ではないのです。
よろこぶや
おうじのきつね
王子稲荷にお参りをすませた帰り道。
熊五郎はふしぎなものを見ました。
いっぴきのきつねが、坂の下の草むらから出てくると、落ちていた葉っぱを頭の上にのせて、ポンと宙返りして、とてもきれいな女の人に化けたのです。
「へーーっ。ああやって化けるんだ。
そうそう。聞いたkとがある。友達の竹さんが、去年、王子稲荷にお参りした帰り道、道端にとってもおいしそうなぼたもちが落ちていたんで拾ってみたら、ぼたもちじゃなくて、馬のフンだったんだってさ。
「きつねに化かされたんだ」って言ってたけど、ほんとだったんだ。
ははーーん。女の人に化けて、通りかかる人間をだますつもりだな。いったいだれがだまされるんだろう。
・・・・あれれれ。ほかにだれもいないよ。と言うことは、おれがだまされるってわけか。
でも、こっちはあいての正体を知ってるんだからな。よしっ。だまされたふりをして、反対にきつねをだましてやろう。」
そう心にきめると、熊五郎はきつねが化けた女のそばへやってきて、
「よう。そこにいるのはおつねちゃんじゃないか。おれだよ。子供のころに友達だった熊五郎だよ」
「あらまあ、熊ちゃんおひさしぶりねえ。どこかでごはんでも食べない」
「いいねえ。その先においしい天ぷら屋さんがあるから、そこえ行くかい」
「あら、天ぷら。いいわね。あたし天ぷら、だーい好き」
熊五郎に連れられたきつねの女は天ぷら屋さんに入りました。そしておいしい天ぷらをたくさん食べ、お酒もどんどん飲んで、とうとうお酒に酔って、ぐっすりと寝てしまいました。
熊五郎は店の人に、
「一緒に来た女の人は、お酒に酔って寝ているから、私は先に帰ります。お金は女の人からもらってください。さようなら。
と言うと先に帰ってしまいました。
しばらくして、きつねの女があんまり良く寝ているので、店の人が、
「あのー、お客様。お客様」
「はいはい。あーっ。よく寝たわ。あれっ。いっしょに来てた男の人は?」
「先にお帰りになりました」
「あら、そう。じゃあ、わたしも帰ろうかしら」
「さようでございますか。では、おかんじょうをお願いします。お金はあなたさまからいただいてくれ・・・とおっしゃっていましたので」
「えっ! わたしから?」
ときつねはびっくりしたひょうしに正体を現しました。
「キャーッ!きつねが出たあ!」
お店のなかは大騒ぎ。
みんながきつねを捕まえようと追いかけまわし、きつねはあちこちをぶたれながらも、なんとか逃げることができました。
熊五郎は、きつねをだましたことを友達に自慢しました。
ところが友達は、
「きつねにいたづらをすると、きっとひどい仕返しをされることになるぞ。あやまりに行ったほうがいい」
と教えてくれました。
心配になった熊五郎は、ぼたもちを買って、このまえきつねが出てきた坂の下の草むらのあたりにやってくると、がけのところに小さな穴があって、なかからかわいいこぎつねが顔をだしています。
「あっ。こぎつねさんですか。私は先日、おたくのおっかさんをだました人間なんですけど、悪いことをしたと心から思っておりますので、どうぞ仕返しなんかなさいませんように、おっかさんによろしくお伝えください。これはほんのお詫びのしるしでございます」
とぼたもちのつつみを置くと、とっととにげて帰りました。
こぎつねは、ぼたもちのつつみをくわえる、穴のおくで寝ているお母さんぎつねのところへやってきて、
「いま、おっかさんをだました人間がやってきたよ」
「えっ。また来たのかい。しつこいやつだね。あいたたたた。ほんとにひどいめにあわせやがって」
「それでね、心から悪いと思っているから、仕返しはしないでほしいんだって。
これは、おわびの品だってさ。開けて見てもいいだろう。あっ。おいしそうなぼたもちだ。
おっかさん、ひとつ食べてもいいだろう」
「だめよ。馬のフンかもしれない」
よろこぶや