方法記憶

ある分野のことが詳しく理解できるようになると、他の分野のことも理解が早くなります。
これは、方法記憶を使った相互作用が働くからです。
たとえば、野球を習得した人は、野球の型を覚えていますので、ソフトボールの習得が早くなります。将棋を習得した人は、囲碁の習得も早いのです。
この方法記憶は、無意識に覚えていたり、思いだしたりします。知識や情報は意識的に記憶されますが、ものごとの理解の仕方は無意識に記憶されているのです。
つまり、方法記憶は、いつのまにか自動的に行われているのです。


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将棋や囲碁で名人は、大戦の盤面を完璧に復元することができます。記憶力の天才かと思いますが、どの駒をいつどう動かしたか(全棋譜)をすべて経験記憶だけで覚えることはできません。名人は、経験記憶と方法記憶を利用しているのです。

その方法記憶とはどのようなことでしょうか。

脳では、無意識に盤面のパターンを分類してその法則性をつかみ取っています。
素人がでたらめな駒の動かし方をした場合は、いくら名人でも全棋譜を復元することはできません。なぜならば、今までの経験で蓄えてきた方法記憶が使えないからです。天才は、方法記憶を多く蓄積していて、自然にそれを利用しているのです。

九九は覚えなくてもよい?

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方法記憶を使って計算してみましょう。
「10倍すること」「倍すること」「半分にすること」は、完璧な方法記憶になっているとは言わないまでも、少し考えればそれほどストレスを感じずにできると思います。
それでは、「10倍すること」「倍すること」「半分にすること」と足し算引き算で、九九をやってみましょう。

7×8を九九を使用せずに上記の方法記憶だけで計算すると

7を10倍する。そこから7を倍にして引くことになります。(7×10-7×2=70-14=56)

または8×7と逆にして

8を10倍する。それを半分にする。8を倍にして足す(8×10÷2+8×2=40+16=56)

となります。
つまり、「10倍すること」「倍すること」「半分にすること」が方法記憶として自動的に瞬時にできれば、(自動的でなくても早くできれば)九九より早く計算できるのです。

みなさんは九九を覚えているので、九九の方が簡単かもしれません。
でも、たとえば
423×19の計算をしてみてください。
九九を利用して計算していては結構大変です。
この計算を、上記の方法記憶で計算します。

423を10倍する。それを倍する。それから423を引く

どうですか?
なんとか計算できますよね。
このように、知識は、覚えた九九の記憶より、10倍、倍、半分という方法記憶を身につけた方が、理論が根底にあるため全てに応用できるのです。

九九を知らなくても、方法記憶で計算はできるのです。

喜屋(よろこや)カンナ

参考文献:脳の仕組みと科学的勉強法 池谷裕二