ミラーニューロンの発見
研究室で、コーンアイスを舐めている時、電極につながれていた猿の脳内のニューロンが発火したことから、ミラーニューロンが発見されました。
サルがコーンアイスを舐めた時に発火する脳のニューロン(神経細胞)が、実験者のコーンアイスを舐めるのを見ただけなのに発化したということです。
舐めたことを見て脳が感じているということです。
その後、いろいろな実験がなされました。
実験A:パントマイム
では、サルは、パントマイム(実際にはないのにあるように振る舞う)にも反応するでしょうか?
次の①②の状態で、サルのミラーニューロンが発化するかどうかを実験しました。
① 実験者がリンゴをつかむ。
② 実験者がリンゴをつかむ動作を演じるパントマイムを見せる。(実際にはリンゴは存在しません)
その結果は以下の通りです。
① ミラーニューロンが発化する
② ミラーニューロンは発化しない
パントマイムで、ミラーニューロンは発化しないということは、振りだけではだめだということです。
実験B:オレンジを隠す
次は、仕切り板を用意してリンゴを隠して実験します。
① リンゴを机の上に置き、仕切り板でそのリンゴを隠します。次に仕切り板の背後に手を伸ばしてリンゴを掴みます。
(サルからは、リンゴを掴もうと手を伸ばしているところは見えますが、実際にリンゴを掴む動作は、仕切り板にさえぎられて見えません)
② 机の上には何も置かず、仕切り板を置きます。次に仕切り板の背後に手を伸ばして、物を掴む動作(振り)をします。
(サルからは、手を伸ばす動作は見えますが物を掴む動作をパントマイムでやっていることは見えません)
さて、この場合はどうでしょうか
① 実験(脳のニューロンの放電を測定)で記録を取っていたミラーニューロンの50%は発火しましたが、50%は発火しませんでした。
② ミラーニューロンは発火しませんでした。
実験Aの結果と同じように、パントマイムでは、ミラーニューロンは発火しません。ただ、掴む動作を見てなくても、50%のミラーニューロンは、それを想像できたということです。
実験C:リンゴとボール
こんどは、食べ物と単なる物体で比較してみます。
① 実験者がリンゴを掴んで口に運ぶ
② 実験者がボールを掴んで口の近くに置いた箱に入れる。
結果は
① 実験で記録を取っていたミラーニューロンの75%は発火しましたが、25%は発火しませんでした。
② 実験で記録を取っていたミラーニューロンの25%は発火しましたが、75%は発火しませんでした。
つまり、食べるという生きる上でもっとも原始的な動作の方が優勢で、関心が高いということになります。
実験者の動作はミラーニューロンで理解していることがわかりますが、はたして実験者の意図は、理解しているのでしょうか?
実験D:食べようとしている?
① 机の上にリンゴと箱が置かれています。実験者は、手を伸ばしてリンゴを掴んで、隣に置かれた箱にリンゴを入れます。
② 机の上にはリンゴしかありません。実験者は、手を伸ばしてリンゴを掴んで口に持っていきます。
サルは、実験者がリンゴを箱に入れるために手を伸ばしたのか、食べるために手を伸ばしたのかを手を伸ばした時に判断しているでしょうか?
① サルが自分でリンゴを掴んで、隣の箱にいれた時に発火したミラーニューロンが発火した。
② サルが自分でリンゴを掴んで、食べる時に発火したミラーニューロンが発火した。
つまり、実験者が手を伸ばした時、机に箱が置かれている場合は、リンゴを箱にいれるんだという意図を想像していたので、その部位のミラーニューロンが発火し、机に箱が置かれていない場合は、実験者が食べるという意図を想像して、自分が食べた時に発火した部位のミラーニューロンが発火したのである。
ミラーニューロンとは、
他者の行動を自分の脳内で「鏡」のように映し出す神経細胞であるが、他者の行動だけでなくその行動の意図までも識別できる。
参考文献:ミラーニューロンの発見 マルコ・イアコボーニ 塩原通緒訳